パシュミナとヤクのお話。その1:昔のパシュミナ

Nature and Creation 代表の赤池です。

私がパシュミナと出会ったのは、20年ほど前。その当時のネパールではパシュミナストールというと、昔ながらの小さな工房で完全に手作りされていたものでした。お世辞にもキレイとは言えないような場所で、手に入った毛を織るだけといった感じで、最初印象に残っているのは、はおばあさんがストールのフリンジを、筵に座り足のすねを使って作っていたこと!おばあさんのスネ毛まで入ってしまうのではないかと心配してしまいましたが()、それはさて置きそういう工房が沢山ありました。

 

染めていない毛を使うので、茶色のもあれば白っぽいものもあり、見た目はとても素朴でした。でも、その暖かさとそしてふんわりとした厚み、それが見たままの毛で出来ていて、手で紡いで織られていることに感動したのでした。

 

ところが、その後パシュミナと呼ばれるカシミヤや、ウール、混ぜ物のある繊維のストールが出現し、飛ぶように売れる時代が来ました。柔らかい、薄い、というイメージからパシュミナの名を借りたのかもしれませんが、綺麗な色に染められたそれらは、明らかに別物でした。糸は中国の方から機械紡ぎの糸が入ってきました。同時に、昔ながらの本当のパシュミナがあっという間に姿を消しました。

 

もちろん、綺麗な色のものは、ファッションとしては便利です。しかし、ネパール人まで、観光客にこれはパシュミナよ!と言って売っていることが私には理解できませんでした。自国の伝統工芸に対する誇り、アイデンティティーはないの?と思っていました。本当に質の良い高級なものもあります。でもそれは、カシミヤであってパシュミナではないのです。

 

さて時は過ぎ、私はもう一度その当時のパシュミナストールを実家でみることになりました。茶色と白の素朴なそれは、母が孫をおんぶするときのお包みとしても健在でした。(左写真:コットンの経糸で作られていたためとても丈夫です。)他のものに変えがたい愛着とともに年を重ねて使い込まれたパシュミナには本物にしか出せない存在感がありました。 つづく。